atelier HIBARI

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「祈りの島」


これまで一度も訪れることのなかった祖母の故郷、長崎五島列島へふと行って見ようと思った。

<祖母について>
祖母は長崎県平戸で生まれ、五島列島若松島で育ち、第一次世界大戦中は朝鮮半島、第二次世界大戦中は中国河北省、戦後は石川県小松市、大阪府茨木市、年老いてからは東京で暮らし、埼玉でその人生の幕を下ろしました。明治、大正、昭和、平成と4つの時代を股に掛け、長崎五島列島から東シナ海と日本海を渡り、大陸と島国日本を2往復し、たくましく生きた祖母の血が、私の中でも脈々と受け継がれているのを感じています。

<私と異国情緒>
私は異国情緒漂う物に強く惹かれる子どもでした。初めて家族で横浜中華街を訪れた時の胸のときめき、大好きだったカンフー映画の広東語の響き、アジア雑貨店の白檀の香り、中国、香港、台湾、韓国の文芸映画のそこはかとなく漂う情緒、東南アジアの音楽の旋律、私の子ども時代はいつもそういうものに囲まれていました。20代になり、私のアジアブームはさながら天正遣欧使節が通った海上の交易路のように、東アジアから東南アジア、そしてヨーロッパへと移って行きました。20代後半でヨーロッパへの興味はピークを迎え、とうとうイギリスのロンドンへ移住しその後6年間をその地で暮らすことになりました。

<ロンドン>
大英帝国の名残りをとどめるロンドンは様々な国籍の人々や物がひしめきあうヨーロッパの中心です。インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、香港、マレーシア、シンガポール、ナイジェリア、ケニアなどかつてイギリスの植民地だった国々の国民は優先的にイギリスで暮らすことができます。私もロンドンで暮らす外国人として多くの人々と交流を持ちました。特に親しくなった友人達の多くはなぜだか、ブラジル、イタリア、マレーシア、中国、台湾、香港から来た人たちでした。彼らの国々を世界地図上で辿ってみると、それはやはり15世紀中ばから17世紀中ばまで続いた大航海時代の海上の道なき道を想像させます。

<人生は旅>
私の40数年の「人生という旅」は、私の祖先たちが築いてきた長い歴史をコンパクトにトレースしているのではないかと思う時があります。現在進行形の「人生という旅」で出会う人や物や状況は、かつて「前世の旅」で出会っていて、ここでは単に再会しているだけなのではないか?となんの根拠もいロマンティックな妄想をかき立てられてしかたがないのです。祖母の強くたくましい性質を自分の中に見いだし、彼女や祖先たちが生きてきた様々な土地に想いを馳せ自分のこれまでの人生を重ねることで、自分の好奇心や興味の源のようなものを知ることがでいるのではないかと思うのです。

<五島>
祖母は生前、私たちの祖先は平家の落ち武者だったと話していました。隠れキリシタンであったという話は聞いたことはなく祖母の葬式は仏式でした。けれどもキリシタンはかつては60万人以上もいたのですから、私の先祖が棄教した元キリシタンだったと考えてもおかしくないように思います。そのように想像して長崎五島列島の歴史を見てみると感慨深い物があります。26聖人殉教者の1人、12歳の少年ルドビコ茨木、キリシタン大名の名代でローマへ派遣された天正遣欧少年使節たち、彼らがヨーロッパから持ち帰った活版印刷機、教会建設の匠鉄川与助の建てた和洋折衷の美しい教会、玉之浦椿、静かな漁村と海。私が異国情緒漂うアジアの国々とヨーロッパに興味を持ち、特定の宗教に限らず信心深い人々に惹かれる理由、現在版画や活版印刷を使用した作品を作り続けていることが1つの線で繋がるように感じるのです。

祖母の生きてきたいくつかの土地の中でも、五島列島は、古くから中国、オランダ、スペイン、ポルトガル等の国々と交流を持ち、地理的、文化的、歴史的、宗教的にとても興味深い物語性を持っています。得てして、五島列島は東京を中央としてみると、日本の最果ての地と思われがちですが、五島を中心としてみると、世界をとても近く感じることができます。そして地球をたったひとつの大きな国だと感じることができるのです。それが、私のこれまでの人生(恐らく、まだ折り返し地点)の中で私が信じようとしてきたことなのかもしれません。

初めて訪れた祖母の故郷、長崎五島列島と私の好奇心や興味の源を探る旅を描いた版画作品です。
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by atelierHIBARI | 2016-02-12 18:20 | Work / Project