atelier HIBARI

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Experimental Drawing

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© Vantan Design Institute

昨年からバンタンデザイン研究所にて
アイデアワークショップとデザインワークショップという
異なる二つのワークショップで構成されている授業を
担当させていただいています。

今年はワークショップに加えドローイングも取り入れてとのこと。
あらあら、どうしましょう?と最初は思いましたが
結局、前半はいわゆる美大受験予備校で学ぶような
形、明暗、量感、質感などを捉える鉛筆デッサンを行いました。

ビジュアル学部 基礎科 (1年生) は、みなモチベーションが高く
今までデッサンなどしたことの無い学生も沢山いるはずなのに
みなとても素直ないい絵を描きます。

しばらく、鉛筆デッサンを続けていくうちに
私の「ちょっと変わったことやりたい病」が......で、
女子美術短期大学で立花文穂さん(現:女子美術大学教授)が出題した
課題:「自分の手のひらにある見える線をすべて描ききる、しかも特大に!」
(陰影を無視して) を宿題として出してみました。
みんな、なかなか頑張って描いてきてくれたので
後半は、より創造性の授業らしい課題の提供をと思い
3回に渡り、Experimental Drawing (実験的ドローイング)
と題してワークショップ形式で授業を行いました。
いわゆる、普通のデッサンを続けデッサン力を身につけたい学生の為に
写実性の求められる鉛筆デッサンは宿題として引き続き出題しました。

それでは、Experimental Drawingの様子をお伝えします。

Experimental Drawing Day 01

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洗面器に墨汁を投入。
スポンジ、ストロー、段ボール、など様々な道具を駆使し、思い思いに表現しています。


グラフィックデザイン学科では、普段は、小さなコンピュター画面や用紙上での
作業が多いと思います。そこで、教室が埋まるぐらいのサイズの用紙を
準備してもらい、墨汁のみ(情報を少なくするため)を使用し様々な画材表現と描画画材
(割り箸、ストロー、スポンジ、段ボールなど) を使用し
1枚の画面をクラス全員でシェアしながら描くということ試みました。

みな、ジャージに着替え、身体を使い、のびのびと描いていました。
普段、眠そうにしている学生もこの日ばかりは生き生きと授業に
参加していたように思います。そういった学生がこのような授業で
個性を発揮するというパターンが多い気がします。
面白い展開になりやすいです。

<<< Session 01

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左:リズミカル&グラフィカルなパターンを描く 右:教室....汚れちゃったかも....

テーマ:「香りをかぎ、そのイメージを自由に表現する」

今回は、白檀の香りを用意しました。
合図とともに、作業をやめて、違う場所に移動し作業を再開
を何度か繰り返しました。

<<< Session 02

テーマ:「音楽を聞いて、そのイメージを自由に表現する」

ブラジルやアフリカの音楽を用意しました。
合図とともに、作業をやめて、違う場所に移動し作業を再開
を香り同様、何度か繰り返しました。

いわゆる、共感覚を生かしたワークショップです。
レッジョ教育でも取り入れられている方法です。
合図とともに、手を止め、移動してまた描き始める。
個の作業とグループの作業が混在し、最後には1枚の絵を
グループで完成させるというもの。

1枚の紙の上での共同作業を通し、他人がどのようなことを感じ
表現しているのかを発見することができます。
個としての作業をしながら、最終的にはグループの作業となり
大勢で作品を完成させる達成感があります。
何より、大きな作品をみんなで描き上げる楽しさを味わって欲しかったです。

最後に、これらの2枚の作品は、クラスみんなに分配され
宿題としてそれをもとにZineを制作してくるように伝えました。
Zineはまた後ほどご紹介します。

<<< Session 03

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左:かなり真剣にブレスト&計画 中:目隠し、準備OK 右:反則技?(笑)

クラスを3人1組で5つのグループに分けます。
テーマは「陰影礼賛」(前回までのアイデアワークショップのテーマ)

【ルール】

1)描く人は1人だけ。描くときに目隠しをする。
2)残りの人が、ブレスト、計画、支持を出し、絵を完成させる。

この「目隠しをする」というのは、様々なワークショップで使用されている
方法ですが、私はグラフィックデザイナーの駒形克己さんのワークショプから
影響をうけ今回取り入れることにしました。

盲目の状態では、通常と異なる感覚が研ぎすまされ、普段気づかないことに気づく。
盲目の状態では、人の助けがないればできないこともある。人に身をゆだねる感覚を知る。
目の見える人は、盲人にどのように支持を出せば、思いどおりの絵を完成させることができるのか?
新しい感覚と新しいコミュニケーションの発見が期待されます。

実際、学生に取り組んでもらっての感想は....

盲人役の学生
・空間の感覚が全く異なるという発見をしたそうです。
・想像上の画面は、実際のものより大きく感じたそうです。

支持を出す学生
・あっち、そっち、こっちのような言葉での方角支持では通じない。
・割り箸などを使用し「たてに二本分右!」などして距離を伝える。
・弧を描くように、大きく振りかざしてなど、身体の動きを
 イメージしやすいように言葉で表現する工夫が必要だった。

観客として、見ている私は本当に面白かった!
このワークショップは数ヶ月前に行われたものです。
これを行った当時は先日講演を聞かせていただいた
中津川先生が通常行っているワークショップの内容を知らずにいました。

先日、先生のワークショップのお話を聞きし、おこがましいですが
私と先生のワークショップの中に共通点を見いだすことができとても嬉しかったのです。
なんだか、答え合わせをしているようでした。
たしか先生も「目隠しをして描く」ワークショップもされていたはず。
そのお話もいずれお聞きしたいです。

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5つの異なる陰影礼賛 左右対称の阿修羅像を感覚で描ききっていたのは凄かった。
最後にみんなで優秀賞を1つ決めました。確か...下段左だったはず...でも、みなそれぞれ面白い解釈で制作できたので、みんな優秀賞です。


Experimental Drawing Day 02

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香りと味の作品を壁に展示

前回、心と身体を解放したので、今回は小さな画面でも同じような結果を期待しつつ
今回は前回の感覚をキープしながら「食」をテーマに
同じく「スミ(黒1色)」を使用してのドローイングに挑戦です。

テーマ:香りと味の強い日本的な「食」を描く

(例えば:しそ、かぼす、みょうがなど)

<<< Session 01

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左と中:刺激的な香りと味を彷彿とさせるパターンとシンボル 右:具象と抽象をあわせたグラフィカルな作品

まずは、香りをかいで、その感覚を描く

<<< Session 02

そして、味わって、その感覚を描く

苦い、酸っぱい、臭い、不味いなどどちらかという
負の感覚を持った人が多かったように思います。
ですから、完成されたドローイングもちょっと
刺激的なものが多かったように思います。

Experimental Drawing Day 03

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クラスメートをモデルにした作品を壁に展示

さてさて、Experimental Drawing 最終回。

テーマ:「人物」

今まで同様「スミ(黒1色)」を使用してのドローイングです。
スミ1色と行っても、支持体、画材、技法、表現方法は自由です。
ですから、マーカーを使用したもの、コラージュを使用したものなど様々です。

<<< Session 01

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クラスのみんなを、モデルとして描く

クラスのみんなを描いてみる。
いわゆる、クロッキーやデッサンのような写実性を求めるのでなく
その人の印象、特徴を大切に、自由な発想と感性を使って描くというもの。

<<< Session 02

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雑誌を見ながら、モデルを描く

雑誌のモデルを描く、ファッションイラストレーターになったつもりで。
これまでの、様々な実験的ドローイングの成果だここに集結。
似てる、巧いとは違う、いい絵が描けたのではないかと思います。

ーーーーーーーーーー

◎授業を終えての所感

デザインの勉強をする学生は、条件や制約を守りつつ
制作することを求められることが多いと思います。
確かに、アーティストの様に自己表現が主な目的ではない
デザイナーはクライアントの意向をくみ様々なルールを守りながら
製品を完成させなければいけせん。

けれども、ルールばかりを気にしすぎるうえ、言われた条件を入れるだけ
整えただけ、従来通り、のデザインが世の中にはあふれているように思います。
スティーブ・ジョブスの自伝のジャケットデザインしかり
中刷り広告のアルコール飲料の広告のみな同じなことといったら....
学生のうちは、もっとのびのびと探究心をもって
実験的なことをした方がよいのではと常々思っています。

もっと、主体的に、リスクをおって、異なる角度からの発想の転換/展開、
異なる着眼点からスタートすることに積極的に
トライしてみても良いのではないでしょうか?
ルールは自分で作るぐらいの気持ちで。

学校は、職業訓練校のような技能習得だけの場所ではなく
新しい発想の実験の場であって欲しいです。
今あるスタンダード(プロフェッショナル)に近づく所というより
真新しいもの、革新的なもの、見たことの無いものが生まれる場
そして、それを作りだすのは次の世代を担う学生たちなのではないかと思います。

今回のドローイングの授業は、そのような発想の転換の手助けに
少しでもなったら良いなと思い実施しました。
偉そうなこと、たいそうなことを言っているようですが
私自身、意外にまじめで、頭でっかちなので
発想を柔軟にする為に、感じなければいけないこと
学ばなければいけないことが沢山あります。

ですから、どんな授業を受け持っていても、私自身常に学ぶことが多く
一緒に勉強させてもらっていると常に思っています。
みんなで共に議論したり、時には制作したりする中で
多くの新しい発見があります。
このお仕事はほんと楽しいです。できるだけ長く続けたいな。

ロンドン芸術大学、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの学長
フランシス・コナー女史 (Professor Frances Corner OBE)に
昨年お会いした際に教えることについてお話を聞かせていただきました。
会話の最後に、彼女は私にこのような言葉を残してくれました。
学生にとって一番大切なことそれは....

Take a risk!


今回バンタンデザイン研究所 ビジュアルデザイン学部 基礎科のみなさんの承諾を得て
授業風景を掲載することができました。どうもありがとうございました。

© 2011 Vantan Design Institute VD Year1 for the images
© 2011 Natsuko Nakamura for the text
© 2011 atelir HIBARI for this edition

All rights reserved. No part of this publication
may be reproduced or transmitted in any
form or by any means, electronic or mechanical,
including photocopy, recording or any
other storage and retrieval system, without
prior permission in writing from atelier HIBARI.

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by atelierHIBARI | 2011-11-23 13:14 | School

Linocut

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最近、古い版を整理している。
リノ版画を始めた、2003年頃に制作した版が出てきたので
久々に刷ってみた。

イギリスのリノリウム(ゴム版)は
日本のと違って 'ゴム' って感じで、裏は麻でできている。
その当時、シャープな切れ味の良い彫刻刀を持っていなかったし
手慣れてもいなかったので、作品はかなりざっくりしたもの。

けれども、このざっくりした感じが
最近のちまちましたのより、良いように思える。
なんか、以前の方がのびのび制作していたな。
細かいことなんてぜんぜん、気にしないで。

世界堂で買った、ものすごく細い
三角刀と丸刀はしばらく使用禁止かな。
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by atelierHIBARI | 2011-11-21 21:00 | Work In Progress

Clinically Art

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©This image is from A/A gallery

3331 Arts Chiyoda 内にあるエイブルアートスタジオで開講された
「臨床するアート」とう講座の「時間と空間を届けるアートワークショップ」
を聴講してきました。

講師はいつもお世話になっている中津川浩章先生。
以前、工房集を訪れた際にもこのブログで先生についてお話ししました。
バンタンデザイン研究所、エイブルアートスタジオでの講師の他
工房集のアートディレクター、さらには被災地や保育園での
ワークショップのファシリテーターなどをされています。
本当は何人もいるんじゃないの?一人で全部こなしているの?
と疑ってしまうほど、超多忙なアーティストです。

先生の活動に以前から興味があり、お話を聞かせていただきたいなと思いつつ
学校ではなかなか時間がありませんので、今回このような機会を持たせていただき幸運でした。

トークでは先生の若かりし頃の様子、アーティストになった経緯
被災地でのワークショップについて、保育園でのワークショップについて
福祉施設での活動など、画像を交えて沢山のお話を伺うことができました。

《備忘録》
私の覚えてること興味をもったことを私の解釈とともに私自身の為にメモされたものです。
このブログを読まれている方と共有いたしますが講演内容はこの数倍も素晴らしいものです。
機会があれば是非ご本人からお話を伺ってください。

ーーーーーーーーーーー

◎まずはご自身のお話 ー 自己肯定/生きる力/表現するということ

進学校に通われていた高校時代。先生は、いわゆる品行方正ではなかったようです。
授業をさぼっては、雀荘に通い、お酒を飲んで、バンドをしたり、時には暴力をふるったり。
現在のにこやかな先生からは想像もつかない様子。だけど、時より見せるキリッとした
意志の強さや厳しさのような物は、アーティスト特有のそれとは別に
不良少年の名残りや、Rockn'Roll 魂のような物だったのだと、今になって思います。
先生は、多くの十代の男子が抱える、ヒリヒリとした苛立ち、反抗心、焦燥感を持った
多感な高校生だったのですね。

ある日、高校の先生に呼ばれ、こんなことを言われたそうです。
「学校を辞めたらどう?つねに250人中250番だけれど
もし、この学校に1000人の生徒がいたら君は1000番だよ」と。

先生のお母さんはその話を聞いて涙したそうです。
そのとき先生はお母さんに聞きました。
「僕と先生の言うこと、どちらを信じるの?」
お母さんは迷わず自分の息子を信じるといいました。
それから、先生は自分に向き合い、自分が何が得意で、何が好きか考えました。
そして美術の成績は良い方だ。絵を描くことが好きということに気づき
ご近所のアーティストに絵の手ほどきを受けました。

ひとりで絵を描くことは気持ちがよいこと。
絵を描くことは自分に向き合うこと。
ー 自己肯定。

自分自身の周りで起きている困ったことや、嫌なことの要因は、自分自身にあると言います。
先生にとって絵を描くことは、自身に向き合うこと、自分自身と対話することだったのです。
絵を描くことを通し、自身と向き合い、対話し、自己肯定を通し、自分自身に平和を取り戻し
自分自身が変化したことによって、周りの態度が変わり、人間関係が好転します。
そして、画家になることを決意されました。それ以外には。考えられないと思ったそうです。

後に先生は、自分の好きな作家にアウトサイダーアーティストが多いということに気がつきます。
そして、彼らの作品への向かい方と先生のそれとが似ていると感じるのでした。

絵を描くことは単に物を創るということだけではなく
自分自身と向き合い、対話し、肯定し、表現し、生きること。

先生はそれまで画家として活動されてきましたが
アウトサイダーアーティストの共通点を見いだしてからか
40才以降は、障害者の福祉施設、保育園、専門学校、大学など
様々な施設で教育に関するお仕事や、ワークショップに携わるようになっていきます。

ある日、中津川先生と教員室ですれ違った時、こんなことをおっしゃっていました。

「以前は年間4回も5回も個展をしていたんだけれど、現在はワークショップばかりしている。
自らそう仕向けている訳ではないから、きっと時代がそれをもとめているんだろうね」

ワークショプ自体がアーティストの表現になりうるし
既にそれを意識的に行っているアーティストも沢山います。
けれども先生の場合は、もっと、こう、目に見えない何かに突き動かされ
ワークショップをするという任務を自然に受け入れいるという感じがします。

画家になったのも、現在しているワークショップのお仕事も
宿命的な出会いなんだろうなと、お話の端々からそう感じました。

そして先生はこう続けます。

「アーティストとして絵を描くことは、できるだけアートから有用性を排除すること。
これまでのアートの文脈により、アートとは何かの役に立つ物ではあってはいけない。
誰の役にも立たない物を、ただ、ひたすら描き続けてきた。」

「けれども、ワークショップの仕事は確実に誰かの役に立っていて、役に立っているという喜びを感じる。
そして、ワークショップをするたびに、参加者からもパワーをもらう。
あんなに色々な場所を行き来しているのに、疲れを感じることがまったく無い。
アートに有用性はないけれど、人としては役に立ちたい。自分に対し、肯定的に、人の役に立ちたい」と。

◎仙台でのワークショップのお話 ー 主体性/身体とアート/プリミティブ

震災後、5月にアートインクルージョンというグループと美術家の村上タカシさんと仙台を視察されたそうです。
そこで自分たちに何ができるか、何が必要とされているかを考えたそうです。
そして、宮城県仙台市、長町駅前、児童館、福島県、南相馬の幼稚園などで
子ども向けワークショップや、似顔絵屋さんを展開していきます。

通常、大きな紙と線を使用したワークショップでは普通の鉛筆を使用するそうですが
被災地では、鉛筆の黒い線が集合して面になり、暗闇になっていく様は
子どもたちに震災のトラウマを呼び起こす物と考え
カラフルなクレヨンを使用してのワークショップとなりました。

1)大きな声を出して
2)最初は1本のクレヨンで
3)続いて2本同時にもって
4)左手を使って
5)太鼓を叩いて、そのリズムにあわせて
*被災地では金属製のお盆に菜箸を使用

このようにアプローチをするわけは、好きに描いて良いと言ってしまうと
大きな画面に小さく、記号的なキャラクターを描く傾向にあるからです。
このようなワークショップでの目的は単に絵を描くということではなく

心を解放し、体を使って、プリミティブ(原始的)になることが大切なのだそうです。

話を聞いていると、なんだか、シャーマンの儀式のようです。
もちろん、ワークショップに宗教性はまったく無いけれど。
太鼓をたたき続け、大声を上げ、体を使って線を描き続ける行為は
開放的で、気持ちがよいだろうな。きっとトランス状態になると思う。

開始当初、子どもたちは警戒心をむき出しにし
「絵を描く意味なんか無い、やりたくない!」と言ったそうです。
クレヨンを蹴ったり、紙を破ったり、プロレスをしたり、
先生の目を見ながら、挑発的に、棚の上にある物をひとつずつ落としていったり。
先生は覚悟を決めました。
「これはいつもと状況が違う、真剣勝負で臨まなければ....」

けれども、線を描き続けるうちに、反抗的だった子どもたちは一転して、静かに集中していきました。
最後には「ぼくの芸術!さわるな!」といって、自分が描いたところを大切に持ち帰ったのだそうです。

プロレスを仕掛けてくる子どもたちは、大人と身体的にふれあうことで安心感を得ていたのです。
震災後、子どもたちは大人からの見えないメッセージ、プレッシャー、重圧を感じていたのでしょう。
それが、不信感となり、ワークショップ開始時の荒れた状況を生み出していたのです。

それが、受動的から主体的に切り替わったとき、子どもたちはものすごい集中力で描き続け
最後にはすっきりと心が解き放たれ、帰路についたそうです。

◎南相馬でのワークショップと仙台での似顔絵屋さん ー1対1のコミュニケーション

南相馬では幼稚園でワークショップを行いました。
ワークショップ開始前に、沢山の子どもたちが、先生に寄って来ては
自分たちの身の上に起こったことを話したがったそうです。

「お家が流されて、何にもなくなっちゃった」
「先生何歳?43歳?43歳?」(おそらくこのこのお父さんが43歳なのでしょう)
ここでもやはり、やたら体に触れたがる子どもが多かったそうです。

外から来た人に、自分たちの身の上に起こったことを話すことにより
気持ちが落ち着くのでしょう。触れてはいけない話と、避けるのではなく
ゆっくりと耳を傾けて、相手の思いを受け止め、理解することで
その人たちが癒されることもあるのですね。

仙台では似顔絵屋さんを行ったそうです。

先生は1人につき20分ほどかけ、5時間ほど休み無く、似顔絵を描き続けたそうです。
待っているお客さんは、お茶とお茶菓子を頂きながら、みんなで話しをし順番を待っていたそうです。
モデルとなっている人は、先生と話しをしながら、和やかな時間を過ごしました。

先生はこんなことをおっしゃっていました。

「70歳ぐらいの人をじっと見つめて、話を聞きながら描いていくと
その方の二十歳ぐらいの顔が見えてくる。小学生の女の子を描いていると、
その子が大人になった顔が見えてくる」と。

似顔を描かれた人の中には、感動して遺影にしますと大切に持ち帰った方もいらしたそうです。
誰かに20分間も見つめられる行為は、普段の生活の中ではあまり無いことだとおもいます。
お互いじっと見つめ合う時間は、自身を見つめる時間でもあり
なんだか、瞑想をしているような状態だったのではと想像します。
心配事の多い忙しい毎日に、たった20分間だけれど
自身に向き合う時間は、とても貴重で有意義だったことでしょう。

Perfect communication is person to person
1対1こそが完璧なコミュニケーション
という言葉が頭をよぎりました。

◎良いワークショップを作るには ー 形にならない感覚を与える

被災地を駆け巡りながら、東京でも様々なワークショップを行っています。
最近では保育園でのお仕事が多いそうです。そこで感じたことをお話ししてくれました。

'良いワークショップは自分が消えているとき'

受動的ではなく、参加者が(ここでは、保育士さんと園児たち)が主体的に表現に取り組み
何かを発見していくことができたら、そのワークショップは良いワークショップとなります。
ワークショップは何かを教えることではない。ときに、ファシリテーターが教えられる、
癒されることも多々あります。そこにいるみんなが、一丸となり、一致団結し
みんなで作る空気感がとても大切と先生はおっしゃいました。

'うまくいかないワークショップとは?'

ネガティブな空気感がある
(保育園や施設の)先生方がやらされていると感じている
(保育園や施設の)先生方の実績を残すだけのもの

これまで、先生は様々な教育機関でワークショップに取り組んできました。
その多くは、コミュニケーション・デザインやアートの情報を与えたり、
4つの記号(例えば:家。乗り物、動物、植物)を与え、絵を描き
そこから絵の見方(絵解き)を解いていく、実践的、実用的な物が多かったようです。

けれども、最近ではもっとコアな部分に触れるような
身体的、感覚的な物に移行してきているのだそうです。
そのようなワークショップのほうが、より現代社会が必要としていると
感じてらっしゃるのでしょうか?

ワークショップを成功させるには、この「形にならない感覚」
一丸となり、一致団結し、みんなで作る空気感を
先生方や保護者の方に理解してもらわないといけません。

ーーーーーーーーーーー

◎聴講して思ったこと

私が普段授業を受け持っていて思うことは
万全の準備をしていったからといって
その授業が良い物になるとは限らない。

授業は '生もの' で、即興性のあるもの。
そこにいるみんなで作り上げていくもの。
その時の空気をみて、いつもフレキシブルに、
フリースタイルで行うもの。と考えています。

では、どのようにその空気を読むのか?
それは、学生一人一人に向き合うこと。

現代の若者の多くが被災地の子どものように
心に問題をかかえていたり、自信が無く
不安な気持ちを抱えて生きています。

以前は、大学や専門学校の講師として、義務教育の担任でもないのに
学生のプライバシーに関与することは良くないこと。
お互い、プロフェッショナルとして、専門分野の話だけしていれば
良いのではないかと思っていました。

けれども、学生の懐に入らないとなかなか良い授業
良い空気感を作ることはできないと気づきました。
そこで、授業内外で、学生の悩みや不安について耳を傾けたり
私自身の話などを赤裸々に語るようになりました。
(もともと、そのような関係を気づきたかったのに、
なぜだか、それはいけないことのように感じていたのです)

恋愛のこと、家族のこと、さまざまな人間関係、将来に対する不安など。

こちらから歩み寄り耳を傾けると、学生は感じていることを
つらつらと話しだし、話した後はすっかり落ち着いて制作を始めます。
みんな、ふつふつとした思いを日々抱えていて生きているようです。
特に、アートやデザインのような答えの無い問に日々取り組むものは
時に、心を解き放ち、いろいろな物を吐露しなくてはいけないような気がします。

それが、できたときには、とんでもない絆と力が生まれ
クラスが一体となり、個々に自身の方向性を定め
自発的に制作していくようになります。
こうなると、先生の言うところの「私が消える」という状態になり、
本当に良い空気になっていきます。
私はまだまだ、未熟なので、このような経験は数回程度ですが...
こういうことを意識して、日々精進していかなければいけませんね。

美術学校ではいわゆる、「造形=形を造る」ことを主に教えますし、習います。
けれども、目に見える「形を造る」以前に、目に見えない「感じること」「考えること」
を大切にしなくてはいけません。今、私はそのことを学生と日々取り組んでいます。
教える方も、習う方も、これに関してはとても難しいと感じています。
ですから、毎日一緒に学んでいます。

今回、先生のお話を聞いて、この「目に見えないこと」が
いかに様々なことに作用するかということに確信を得ることができたように思います。

中津川先生の活動に関しては、先生のトークに、一切宗教的な要素はありませんでしたが
お話を聞いていると、シャーマン、瞑想、目に見えない絆や繋がり、感覚などといった
スピリチュアルな単語がポンンポンと浮かび上がりました。

これらは、今でこそなんだか、怪しげだったり、特別なことのように感じますが
太古の昔、原始時代の私たち人間が動物に近かった頃には
みんなが普通に感じていた感覚だと思います

先生も、トークの中で幾度となく’プリミティブ(原始的)’という言葉を使用されていました。
現代に生きる私たちは、早い時間の流れの中で生活をし、この「感覚」が大変鈍ってきています。
けれども、もう少し、自分自身の為の時間を持ち、感性を研ぎすし、感覚を尊重しても良いように思います。

感覚を研ぎすまし、与えられた物を、自然に受け入れ、ただ一生懸命行えば
何も迷うことなど無く、すべては自然と良い方向に向くのではないかと思います。

また、アートの歴史を振り返ってみても
ピカソ、マティス、ゴーギャン、岡本太郎といった
偉大な芸術家は晩年、プリミティブな世界へ旅立ちます。
そこに、芸術や人間の本質、奥深い性質を見いだそうとしました。
技術やテクニックといった目に見えるものの追求というより
目に見えない大切な何かを探しに出かけたのではないでしょうか。

中津川先生は、おそらくタヒチも、北アフリアも訪れてはいないけれど
感覚的なワークショップ行いながら、被災地を回ることが、先生にとっては
多くの芸術家の行ったプリミティブな世界への探求に
近いのではないかと思いました。

先生の実体験から話される貴重なお話。
まだまだ、頭の中で整理しきれていない感はありますが
私自身の体験と照らし合わせながら、ゆっくりと心で感じ
新たな気づきを発見していきたいと思います。

貴重なお話をありがとうございました。
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by atelierHIBARI | 2011-11-20 21:26 | Lecture

Best Friends

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彼女は私の何もかもを知っていて
私も彼女の何もかもを知っている

最近、再婚して
最近、誕生日を迎えた

上手にプレゼントを渡すのが苦手な私は
とっくに過ぎたお祝いに木版画を刷ってみた

二人で同じうさぎを飼って
二人で習ったピアノ

赤ちゃんの時からいつも一緒の
2件となりに住んでいたともだち

全く異なる二人だけど
気づいたらともだち

これからもずっとともだち
いつまでもずっとともだち
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by atelierhibari | 2011-11-19 22:36 | People

the aftermath of the earthquake 7

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震災から8ヶ月。
ようやく寒くなってきましたが
今年はやはり例年とは何かが違うと
異常に暖かい秋がそう思わせます。

きっと11月も半ばを過ぎると
いつも通りの寒さが訪れるのでしょう。
東北のみなさんが暖かく過ごせますように。
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by atelierhibari | 2011-11-11 00:19 | Aftermath

Introduction to Reggio Emilia approach

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レッジョ教育を広める会@キオッチョラ@
来年1月より月1回(計6回)
大人向けの講座を開講いたします。

レッジョ教育を学ぶ良い機会です。
ご興味のおありの方は是非ご参加くださいませ。

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2012年 大人向けレッジョ教育講座開講
ーレッジョの取り組みを大人が実際に体験する創作講座ー

多くのみなさんよりお問い合わせを頂きました
レッジョ講師石井希代子先生と@キオッチョラ@による
大人向けレッジョ教育講座がいよいよ来年2012 年1月より
半年にわたり開講することが決定いたしました。

《講座内容》
 基礎講座 (色彩、素材、かたち)、発展講座 (自己、他者、社会)
 どちらの講座も映像を見ながらのレクチャー、創作体験、シェアーの
 三本柱になっています。
 例:基礎講座(色彩)…個々の世界(香りから色彩)を表現、みんなで共有して
   楽しくレッジョ・アプローチを学んでいきます。
 *発展講座は基礎講座修了生を対象とし、基礎講座のみの受講も可能です

《日時》
 基礎編
 1月22日(日)
 2月26日(日)
 3月11日(日) 講師レッジョ訪問のため日程繰り上げ
        発展編の初回にレッジョの最新情報をお伝えします
 10:30am-12:00pm

 発展編
 4月22日(日)
 5月27日(日)
 6月24日(日)
 10:30am-12:00pm

《場所》
 エコプラザ西東京(〒202-0011東京都西東京市泉町3丁目12)講座室

《受講料》
 基礎講座 計3回 6000円
 発展講座 計3回 8000円
 *各講座初日に受講料全額を現金にてお支払いください
 (お支払いいただいた後の受講料の返金は致しかねます、ご了承ください)

《対象》
 大人

《お申し込み》
 タイトルに「大人講座希望」とお書きの上、希望講座(基礎編のみ/基礎編と発展編)
 氏名、年齢、住所、電話番号、ご職業をメール( carch@water.ocn.ne.jp)にて
 お知らせ下さい。こちらから折り返し予約確認のご連絡を差し上げます。
 申し込み先着順(完全予約制、本日11月7日より予約受付を開始いたします)
 *定員になり次第、講座毎に締め切りとさせていただきます、ご了承ください

《問い合わせ》
 レッジョ教育を広める会@キオッチョラ@ 
 TEL 042-423-9140
 MAIL carch@water.ocn.ne.jp
 代表 高島
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by atelierhibari | 2011-11-08 23:49 | Everyday life

Printmaking

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彫ったり、刷ったり、彫ったり、刷ったり

ゴム版画は楽しいな。
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by atelierhibari | 2011-11-08 23:32 | Work In Progress

Exhibitions September - November

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It's my first time to visit Yokotori and
I was really satisfied with. So I went there twice.


せわしなく動き回った芸術の秋。
冬の間はあまり動き回らず
じっくりと腰を落ち着かせ
制作したり、今年のことや来年のことに
思いを馳せたりしたいです。
できるかな?

Maison de H×M
イラストレーターBen「落ち葉のおと」展
2011年11月3日(木)~ 11月29日(火)

藤沢ギャラリージネタ
リン版画工房展
2011年10月29日(土)~ 11月6日(日)

otoaä
2012 S/S Collection "SEA"

表参道画廊
美術評論家 鷹見明彦追悼展 
2011年10月31日(日)~ 11月12日(土)

スパイラルガーデン
URTLA 004
2011年10月28日(金)~ 30日(日) / 11月1日(火)~ 3日(木)

現代アートの国際展
ヨコハマトリエナーレ2012 OUR MAGIC HOUR

2011年8月6日(土)~ 11月6日(日)

匙屋
「冨田惠子版画展」 
2011年10月7日(金)〜13日(木)

ギャラリーみずのそら
「スヌーおじさんの秘密の部屋」黒ねこ事務所のぬいぐるみ展
2011年10月22日(土)~ 10月30日(日)

タンバリンギャラリー
「ジロリ展」竹上妙/保立葉菜/山口あき
2011年10月18日(火)〜10月23日(日)

自由帳ギャラリー
「ナントカ百貨 高円寺展〜Halloween Party~」
2011年10月18日(木)~10月23日(日)

にじ画廊
三人展 大平真己 月野里美 豊永たずこ
2011年10月13日(木)~10月18日(火)

ギャラリーフェブ
関昌生展
2011年10月8日(土)~ 10月14日(金)

ギャラリーみずのそら
森田千晶個展「白い葡萄園」
2011年10月1日(土)~ 10月9日(日)

デザイン・フェスタ・ギャラリー
「ぐるぐる16人:はるなつあきふゆ」
2011年10月2日(日)~ 10月8日(土)

ギャラリー いさら
きゃねこ動物造形展「あるところ」
2011年9月20日(火)~ 9月25日(日)

工房集
アンデパンダン展「生きる」
2011年9月23日(金)~9月26日(月)

エキュート品川
アトリエ直送 iichiギャラリーマーケット in エキュート品川
2011年9月26日(月)~10月10日(月・祝)

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学園祭/文化祭

西東京市文化祭
2011年10月28日(金)~10月31日(月)

女子美術大学/短期大学
女子美祭
2011年10月28日(金)~10月30日(日)

バンタンデザイン研究所
VANTAN CUTTING ADGE
2011年10月21日(金)~10月22日(土)

東京デザイナー学院
さいかち祭
2011年9月30日(金)~10月1日(土)
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by atelierhibari | 2011-11-08 00:07 | Exhibition